鴨川に消える終いを知りながら友と辿っている高瀬川
川の死ぬところはここか九十度護岸に添って折れてゆく水
まだ生きているぞとう声あやにくに響かぬ暗渠の上へ降る雨
五人いて三人メガネうち一人はメガネがアイデンティティの男
腕ほどの幹に「サクラの仲間」とて札されて立つサクラの仲間
台風だ転ばぬ先に寝かされた鉢の木の葉が鳴るソワソワと
この宿にキッチンのある仕合わせを青ねぎ刻んで奏でてみます
少食の男五人の夕飯にパスタを茹でるパスタが踊る
ビョウビョウは犬の鳴き声やもしれず窓を開ければしかし台風
伸びてゆくパスタがあれば伸びなやむパスタもあるとメガネの言えり
五人して布団並べて北まくら気にする奴が約四名いる
ハタチって言えばチの音の若々し されど明日は湯豆腐を食う
男五人修学旅行復刻版そにあるまじき早寝がひとり
昨日まで立っていた木が折れていて朝だあまりに明るい空だ
透明で巨大な五歳の神様の玩具らしくてよく揺れるバス
「デーだろ」と言わぬこの友を大切にせよリポビタンディーと呼ぶやつ
ムササビになるという夢叶えたるトタン一枚電線に死す
用件は手短であれ関空が復活しますように銀閣
幸せな日々は等しくあったはず河原にしぼんでいるボールにも
仲良しで似た者どうしぬるま湯につかる僕らに彼女はいない
Hey Siri の横からOK Google!とすかさず発砲してくる男
記念写真撮っておこうか逆光の京都タワーを背景にして
湯豆腐をとらえる箸の思慮深くおまえが父となる日をおもう
おかわりを二度も頼めばほら外で豆腐小僧が闊歩する音
熱々のお茶に氷がキュウと鳴くように言葉が出たがっている
腹満ちてしずかなる夜 赤いモノ見たいし伏見稲荷へ行こう
二拍のち「世界平和」と呟いておもかる石へ挑むな友よ
お稲荷の狐の耳の折れたるが気になるらしい男の癖毛
聚楽第ひと瓶あいた二日目の夜の寝床は寝るもんじゃない
髪の毛を染めるんならば銀ギツネ駆けても駆けてもぬばたまの夜